会社を退職することにした。
サラリーマンに向いていない性格で、長年頑張ってきたが、正直辛かった。
だが、ようやく決意することができた。
これまで何度も周りに相談しても止められてきたので、もう誰にも相談しなかった。

上司と面談して、人事部と面談して、職場にも伝えて、親にも伝えた。
だが、なかなか彼女には伝えることができなかった。もう2年以上も付き合っている人だ。
どのように切り出せばいいのか、どう言えばいいのか、分からなかった。
間違いなくネガティブな反応をされるのが目に見えているので、怖かった。

そして、タイミングも悪かった。
彼女は就活を控えており、最近とある企業のインターンシップに行っていた。
1回目行った時に、つまらなさそうにしていて「行くのやめておけば良かった」と言っていた。
だが、その後そのインターンで、彼女のチームはトーナメント式大会で勝ち進み、全国大会まで行くようになった。
そのうちに、「メンバーたちとプロジェクトの準備をするのが楽しくてしょうがない」と言うようになった。
そして、忙しいのか、俺へのLINE返信が以前に比べると遅くなり、頻度が少なくなっているように感じた。
大体2週間に1回は会うことになっていたのに、向こうから誘ってくることも少なくなった。
過去の経験から、何となく嫌な予感がした。
二人で会っている時も、心なしか彼女の笑い声が少なくなっているように感じた。
ひょっとすると、俺が副業で消耗していて、面白い事を言える余裕がなくなったのかもしれないが。

就活でいろんな素敵な人に出会い、好きな人でも出来たのではなかろうかと。
おそらく、彼女は、俺の勉強好きで真面目で勤勉なところが好きだった。
だが、就活でそのような人に沢山出会い、視野が広くなっていることは想像できる。
別にアイツじゃなくても良いのでは?そう感じているかもしれなかった。
フラれることも時間の問題のような気もした。

そんな状態だったから、ずっと切り出せなかった。2週間ほど、二人の今後について一人で悶々と考えていた。
就活中でこれから東京で就職を目指す女と、家賃を抑えるために地方移住を考えているニート男の組み合わせで、いいアイデアは何一つ思い浮かばなかった。
考えれば考えるほど、「別れるしかない」と言う結論しか出てこなかった。

会った時に話した方が良いと思っていたが、なかなか会えず、
3日ほど返信が来なかった時に、耐えかねて「今度相談がある」とLINEした。
すると、すぐに「電話しようか」と返事がきた。
30分ほど電話したが、考えと気持ちの整理がついておらず、上手く説明出来なかった。
正確に言うと、あなたを失いたくないという熱意をなぜか全く伝えることが出来なかった。
①これから事業をするにあたって、成功の保証もないことに彼女を巻き込んでいいのか自信が無かった。
②正直もう少し女遊びをしたいという気持ちもあった。
③決定的な2人の性格の違いがあり、今はそれがお互いにとって魅力に映るのだが、今後仮に結婚した時にそれが亀裂となりやしないかという心配があった。
これらの気持ちを捨てることが出来なかったのだろう。
無責任にも「今後どうすべきか考えてほしい」と、判断を相手に丸投げしてしまった。
「ずっと一緒にいたい」という言葉をどこかで期待していたのかもしれない。
彼女は「少し頭を整理して考える」と言い残して、電話を切った。

翌日、あっさりと別れを告げる長文のLINEが来た。
そこには、俺に対するこれまでの感謝の言葉で溢れていた。
だが、最後に「辞めることを事前に相談してくれなかったことが残念で仕方ない。」と綴られていた。

その文章を見た時に、思わず泣き崩れた。想像をしていたが、現実になった瞬間、激しく動揺した。
30分ほどして少し落ち着いてから、潔くお別れを納得する旨の返信を書くことに決めた。
返信を書いている間、二人で過ごした数々のデートの光景を鮮明に思い出して、ずっと涙が止まらなかった。
こんなに別れというものは辛いものなのか?
俺がフってきた女の子たちもこのような気持ちだったのだろうか?因果応報とはこのことだ。
俺はこんなに真剣に付き合った女性は初めてだったので、初めてその辛さを知った。
翌日も1日中止めどなく涙が溢れてきて、仕方なかった。
こんな大泣きしたことは無かった。今から17年前、苦労の末、大学受験センター試験で大失敗した時以上だった。
おっさんでも、まだこんなに感受性が残っていたんだな。

こんなにも呆気ない別れ方ってあるのか?
これまで50回以上デートして、500時間以上、一緒に過ごした仲なのに。
LINE1通ずつのやりとりだけで関係は終わってしまうのか?
すぐ近くに住んでいるのに、もう二度と会えないなんて。何度も通った彼女の家にもう二度と行けないのか。。。
こんなことになるなら、付き合っている時にもっともっと会えばよかった。
他の女と遊んだりせずに、毎週一緒に遊べばよかった。もっと真剣に向き合えばよかった。
失ってみて初めて、彼女の存在の大きさ、自分にとっては必要な存在であったことを思い知った。
こんな非モテ丸出しで、誰からも相手にされない自分を気に入ってくれて、2年間も一緒に付き合ってきてくれた。
尋常ではない年齢差で、友達や身内からも反対されていただろうけど、それになびかずに俺を信じて付いてきてくれた。
それなのに、それなのに、そんな大切な人を、ついに、失ってしまった。
二人で未来を一緒に作り上げる可能性も十分あったのに、簡単に潰してしまった。


フェースブックで退職の挨拶をした時、高校大学時代の仲間、会社の同期の仲間たちから沢山激励のコメントもらった。その時、彼らのプロフィールには、結婚式や子供の写真がずらりと並んでいた。微笑ましい光景だった。
自分もいつかこういう時が訪れるのだろうか?一生来ないのだろうか?
自分ももう若くない。だが、事業も成功させないと、食っていけない。
そんな状況で、彼女ほど相性の良い人をこれから先見つけることができるのだろうか?
いつの日か、結婚して幸せな家庭を築けるのだろうか?


くりぼうずの戦いは続く。
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